ヤツらの壁の中の音…
ゴソゴソ、バタバタ、ガラガラ…
オレがその音に気が付いたのは、雲を通してぼんやりと太陽がのぞく、寒い冬の日だった。
会社でお茶を飲みに廊下にある水屋により、紙コップから昇る湯気をぼんやり眺めていると、突き当たりの壁から、その音は聞こえてきた。
ゴソゴソ、バタバタ、ガラガラ…
ビルの工事でもやっているのかと、オレはそのまま無視する事にした。
次の日も、次の日も、壁の向こう側から音は聞こえた。
ゴソゴソ、バタバタ、ガラガラ…
ゴソゴソ、バタバタ、ガラガラ…
オレはだんだん怖くなってきた。
謎の音がする頻度が上がっている気がしたからだ。
得体の知れない生物が繁殖しているのか、ビルの何らかの機械が故障して、致命的な事態が発生しているのか…
妄想と狂気がオレの精神を不安定にした。
ゴソゴソ、バタバタ、ガラガラ…
ゴソゴソ、バタバタ、ガラガラ…
ゴソゴソ、バタバタ、ガラガラ…
ジャー、ゴボゴボ…
ん?ジャー、ゴボゴボ?
その音を聞いた瞬間、謎が解けた。
水屋の奥の壁は、男子トイレの個室に面していたのだ!
カラカラは、トイレットペーパーを引き出す音だったのだ!
アホらし;
オレは、すっかり冷えた紙コップのお茶を飲み干すと、事務所に戻った。