ガセビアのウソつき!(妄想編)
TV番組「トリビアの泉」にあるガセビアコーナー。
最後に「ウソつき」と言うだけの超ミニドラマ?があります。
いや〜妄想が膨らみますなぁ…
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「ウソつき…」
彼女は伏し目がちにつぶやいた…
あれは、街中の公園も色づき始めた11月の事だった。
昼休みの公園で、雑誌の温泉特集を一緒に見ていたんだ。
「その雑誌には載ってないけど、いい温泉知ってるんだけど、行かない?」
何気ない風を装って、彼女に言ってみる。
心臓の高鳴りが、彼女に聞こえているのでは、と思うほど緊張していた。
少し驚いたような顔で見つめられ、慌てる。
「その温泉の近くに、紅葉で有名なお寺もあるんだ。ちょうど見頃だと思うし…」
必死に、取り繕う。
その様子が可笑しかったのか、微笑んだ彼女は、OKしてくれた。
家に帰り、ネットを使って検索し、ようやく山あいの温泉に宿を取った。
連休を利用して、車で宿に向かう。
いつになくはしゃぐ彼女は、紅葉を凄く楽しみにしていた。
昔旅先で見た、モミジの鮮烈な赤。
銀杏の鮮やかな黄色。
彼女の言葉には、虹のような色彩に溢れていた…
高速道路を下り、山道へ入る。
しゃべり疲れたのか、彼女は宿に着いても助手席で可愛い寝顔を見せていた。
そっと揺り起こし、チェックインする。
部屋に案内され、中居さんがいなくなると、なんだか気恥ずかしくて、二人の間に沈黙が流れた。
「紅葉見に行こうか?」
沈黙をごまかすために、誘ってみる。 二人で玄関に行き、中居さんにお寺の行き方をたずねる。
中居さんは、手書きの地図まで書いて道順を教えてくれた後、一言言った。
「もう一週間早かったら紅葉がキレイだったのにねぇ。」
宿を出ると、彼女は伏し目がちにつぶやいた…
「ウソつき…」
暖かな日差しのなか、助手席で眠る妻を見ていると、二人で過ごしてきた日々を懐かしく思い出す。
たどり着いた山寺で見た、散り残った一本のもみじの鮮やかな赤。
宿へ戻る空にかかった、鮮明な虹。
私は、後部座席でそっくりの寝顔を見せる娘に、家族の幸せを感じた。