ウソつき
ある日の昼休み、休憩室にいたクイーンの携帯を見せてもらった。 株価のチャートが表示されていた。 「だから、あんな高級マンションに…」 って言ったら、猫のような笑いでごまかされた… 壁紙には、のどを掻かれて気持ち良さそうにしている、ニケが写ってい…
「ち、ちょっと待って…」 息を切らせて、立ち止まる。 「急に…走るから…」 真っ白い息が、青空に溶けて行く。 「ごめん…」 つないだ手が、ぽかぽかと暖かい。 ジェットコースターのプラットフォームを見上げると、黒い服を着た人影がチラリと見える。 二人で…
ようやく遊園地へたどり着いた。 クイーンの車は、赤信号で見失ってしまった。 ステラさんはまた無口になってしまったけど、遊園地に着くと少し機嫌が直ってきたようだ。 入場ゲートで、1日フリー券を買い、手首にプラスチックのリングを着ける。 おそろい…
「ちょっとコンビニ寄ってこうか…」 ステラさんがカバンを探って携帯を取り出すのを横目で見ながら、僕は車をコンビニの駐車場へ入れた。 「ちょっとトイレ…行ってくる。」 「うん」って生返事したステラさんは、電話がつながらないようで、少しイライラしな…
「ゴメンナサイ」 待ち合わせ場所で助手席に乗ったステラさんは、いきなり謝った。 「クイーンがいろいろ迷惑かけてゴメンナサイ…」 「やっぱり、Kさんと知り合いだったんだ…」 昨日のセクシーなKさんの姿を思い出し、ドキドキした。「なんだか顔が赤いよ…
Kさんが、酔いつぶれてしまった。 もともとあまりお酒に強くないらしく、場の雰囲気に飲まれて飲みすぎたようだ。 「M男〜!おまゑはなぁ…」 まだ絡んでくる… 「M男、おまえ送ってこい。」 先輩もM男扱いする。 「だから、M男って言うのは…」 うぅ、月…
スッ、て音がしそうな立ち方でKさんは立ち上がり、少しふらつきながら僕の目の前に座った。 「あなた、M男でしょ。」 「女王…クイーンさんですか?」 恐る恐る尋ねる。 「ええ、そのとうりよ。」 やっぱり…あのメールも… 「女王にM男って、おまえら、そん…
忘年会も何だか楽しめなかった。 クビをちょんぎるって、不思議の国のアリスの登場人物になりきっていると言うか、困った事態になってしまった。 ステラさんとは、あれから何度か食事に行き、休みの日に遊園地に行く約束をした程度の間柄だし… 座敷の隅の席…
「M男に告ぐ」 忘年会の日の朝、会社のPCを立ち上げると、怪しいメールが届いていた。 差出人は、「クイーン」…女王様? 僕のハンドルネームを知っているのは、ステラさんだけのはずなのに… 「ステラを泣かすようなまねをしたら、クビをちょんぎるよ!」 …
ステラさん。 もっと背が高くて、近寄りがたい人かと思っていた。 私の中では、Kさんの方がブログのステラさんのイメージに近かった。 ブランドもののスーツを着こなし、カツカツ靴のかかとを鳴らしてエネルギッシュに街を闊歩しているイメージ… でも、実際…
「あの、M…男さん…ですよね?」 突然ハンドル名で呼びかけられて、焦る。(もっと普通な名前にしておけば良かった;) 柄の細い、カラフルな傘を持った小柄な女性が、立っていた。 「へっ?」 マヌケな返事をしてしまい、あせる; 「ステラさん…ですか?」 …
その日は、朝から雪が降っていた。 部屋の中でも息が白いほど冷え込んでいた。 会社の辺りは、あまり降っていなかったけど、電車が遅れて少し遅刻してしまった。 午前中は仕事に集中できず、時間がのろのろと過ぎて行った。 昼休みになると、雪は止んでいた…
ブログが気になって、夜中にのぞいてみた。 [S公園なら会社から近いし、私もニケに会に行こうかな…] 彼女のコメントに悩んだ。とぼけてるのだろうか?それとも… [えっ?ニケに餌をあげてたのはあなたぢゃなかったの?] 悩んだ末、書き込んだ。 しばらく…
会社が終わり、本屋で立ち読みとかして家に帰った。 帰りの電車の中でブログをチェックしたが、新しいコメントは無かった。 日記は、「ニケに餌をあげる女性(をんな)」というタイトルで書いた。 明日、彼女はどんな反応をするのだろう。 なんだかワクワク…
会社の昼休み、天気が良かったので、僕は近所の公園へ散歩に行った。 相変わらず、鳩ばばが鳩に餌をやり、猫おやぢが座り込んでいた。 遠足の小学生が、鳩を追い回し、友達どうしで固まってお弁当を食べている。 僕はいつものように、目に付いたモノを携帯の…
「ウソつき〜!!」 ジェットコースターの安全バーにしがみつきながら、涙目の彼女は叫んだ。 ーーー 僕はブログを書いている。 会社の近くにある公園の猫の事とか、イロイロな事を毎日欠かさず更新している。 アクセスカウンターは、毎日100件ぐらい上が…
「ウソつき…」 私は、鏡に向かってつぶやいた… ーーー 彼から久しぶりに連絡があった。 待ち合わせの場所に行くと、彼がもう待っていた。 「よぉ」って軽く右手を上げる癖が、とても、懐かしかった。 「どうせまた、彼女とのことでしょ?」 なんでわかるんだ…
「ウソつき…」 わたしは、鏡に向かってつぶやいた… ーーー 彼と一緒にいてもときめかなくなったのは、いつからだろう。 彼とのディナーが、単なる“夕食“に変わり、化粧もナチュラルメイクという言い訳の手抜きになった。 友達…というか、できの悪い弟みたい…
「ママだ!」 望遠鏡をのぞきながら、僕は大きく手を振った。 ーーーーー 「北海道へ行くぞ!」 パパはいつも、とつぜん言い出すんだ。 いつものママなら、急に目が細くなって、パパは「ハハハ…」って笑ってどこかへ行っちゃうんだけど、今日のママの目はニ…
付き合い出してもう一年。 お互い、言葉には出さないけど、そろそろ結婚を考えていた。(少なくとも、私は…) 何かきっかけがあれば、一歩踏み出せるのに、なんとなく月日が流れていく。 「あなたの育った町を見てみたいな…」 たまった有給休暇を消化して、…
「ウソつき!」 少し怒りながら、彼女は言った。 北海道の広大な大地に彼女は興奮していた。 牧場で食べたアイスクリームの美味しさに感動し、今は、展望台からの見事な眺望にはしゃいでいる。 この町で育った俺には、彼女の感動ぶりがあまり理解できなかっ…
TV番組「トリビアの泉」にあるガセビアコーナー。 最後に「ウソつき」と言うだけの超ミニドラマ?があります。 いや〜妄想が膨らみますなぁ…  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 「ウソつき…」 彼女は伏し目がちにつぶやいた… あれは、街中の公園も色づき始めた11月の事だ…