ジェットコースターに乗る彼女【第10話】

 スッ、て音がしそうな立ち方でKさんは立ち上がり、少しふらつきながら僕の目の前に座った。
「あなた、M男でしょ。」
「女王…クイーンさんですか?」
 恐る恐る尋ねる。
「ええ、そのとうりよ。」
 やっぱり…あのメールも…
「女王にM男って、おまえら、そんな関係やったんか!」
 お調子者の先輩がはやし立てる。
「いや、そうじゃなくって…」
 僕のか細い声は、騒然とした場の雰囲気に呑まれ、だれも聞いてなかった。
 酒の勢いもあり、みんな二人の関係を勝手に推測し、盛り上がっている。
 Kさんも酔っ払って、目が据わっている。
 鋼鉄の背骨がワインに溶けて、会社にいる時よりくだけた感じが新鮮だった。
「私は女王じゃなくてクイーンなの…」
 普段会社の飲み会なんか参加しない人だし、酔っ払っているのは珍しいらしく、みんながいぢって楽しんでいた。
 先輩なんか、
「ボクもしもべにしてください!」
って、叫んでるし…(あれは完全にマジだったな。)
 お祭り好きの部長は、近年にない盛り上がりだと感涙にむせんでいる。
 結局僕は、ステラさんとKさんとの関係を聞けないまま、忘年会はお開きとなった。
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(13話ぐらいまでつづく…)