ジェットコースターに乗る彼女【第11話】

 Kさんが、酔いつぶれてしまった。
 もともとあまりお酒に強くないらしく、場の雰囲気に飲まれて飲みすぎたようだ。
「M男〜!おまゑはなぁ…」
 まだ絡んでくる…
「M男、おまえ送ってこい。」
 先輩もM男扱いする。
「だから、M男って言うのは…」
 うぅ、月曜からの僕のあだ名が、決まってしまった気がする…
「つべこべ言うな!クイーンのご指名だ…」
 Kさんとタクシーに押し込まれる。
 なんとか住所を聞き出して行き先を告げると、運転手はカーナビの目的地に設定した。
ーーー
 マンションに着いても、Kさんは酔っ払ったままだった。
 背筋を伸ばして、歩こうとするけど、ふらついて危なっかしかった。
 Kさんに断って、カバンの中を探り、鍵を探す。
 部屋に入り、明かりを付ける。
 女性の一人暮らしの部屋に入るなんて初めてなので、ドキドキした。
 間接照明に照らされた、シンプルだけど高そうな家具が、Kさんらしかった。
 不思議の国のアリスをテーマとしたフィギュアが、暗闇の中に浮かび上がった。
 寝室に運び込み、ベッドに寝かしつける。
 Kさんのアルコールで火照った体がセクシーで、頭がクラクラした。
 ステラさんには、絶対秘密にしなければと、心に誓う。
 ふと、気が付くと、Kさんがじっと僕を見ていた。
「合格!帰ってよし!」
 へっ?なに?
 Kさんは、スッと音がしそうな立ち方でキッチンへ行くと、冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出してグラスへ注ぎ、飲み干した。
ーーー
 僕は頭の中が疑問符でいっぱいだったけど、クイーンの威厳には逆らえず、部屋を追い出された。 明日、ステラさんにクイーンのことを聞いてみようと思いながら、家路についた。
ーーー
(つづく…)