ジェットコースターに乗る彼女【第12話】

「ゴメンナサイ」
 待ち合わせ場所で助手席に乗ったステラさんは、いきなり謝った。
「クイーンがいろいろ迷惑かけてゴメンナサイ…」
「やっぱり、Kさんと知り合いだったんだ…」
 昨日のセクシーなKさんの姿を思い出し、ドキドキした。「なんだか顔が赤いよ?」
「この車、ヒーターの効きがいいんだ。たぶんそのせいだよ…」
 別にやましいことなんて何もないのに、こんなに焦るなんて、イヤになる。
「本当はステラさんが助手席に座っているのがウレシいからなんだけどな…」
 赤信号でブレーキを踏みながら、何気ない口振りでつぶやいてみる。
「ばか…」
 ステラさんがマフラーで口元を隠しながら小さくつぶやく。
 その姿がたまらなくキュートで、自分でも顔が火照っているのが分かる。
 信号が青に変わり、車が走り出すと、ステラさんはKさんのことを話し始めた。
「クイーンとはね…」
 名古屋の有名私立女子校で、1年先輩だったKさんとは、天文学部というマイナーな部活で知り合ったそうだ。
「わたし、星空が好きだから、ハンドルをステラにしたの…」
 当時からクイーンは、大人っぽくて、バレンタインには後輩の女の子からプレゼントを沢山もらうほどの人気者だったそうだ。
 一人っ子のステラさんは、理想のお姉さんとしてKさんを見ていたようだ。
 周りに媚びず、一人でいる事が多かったKさんは、当時からクイーンってよばれていたそうだ。
 それに、家庭のいろいろな事情もあって、ステラさんを実の妹みたいに可愛がってくれたらしい。
「時々、干渉し過ぎるんで喧嘩になるんだけどね…」
 Kさんの事を話すステラさんは、なんだかとっても優しい目をしていた。
「ひょっとして、今朝も喧嘩した?」
「ちょっと、ね。」
 ステラさんは、少し恥ずかしそうにつぶやいた。
「クイーンからのメールを見たときは、マジびびったよ;」
 空気を変えるために、おどけて言ってみる。
「変なメールが届いてビックリしたでしょ?ほんとゴメンナサイ。」
「ほんと、昨日の忘年会も大変だったよ〜。Kさん酔いつぶれて、部屋で介抱させられて…」
 スッと、ステラさんの顔が青ざめ、あの星を宿した綺麗な目が曇った。
「わたし…聞いてない…」
 やっヤバい!
 車の中の気温が、一気に氷点下に下がった…
ーーー
(次回、最終回?)