ジェットコースターに乗る彼女【第14話】

 ようやく遊園地へたどり着いた。
 クイーンの車は、赤信号で見失ってしまった。
 ステラさんはまた無口になってしまったけど、遊園地に着くと少し機嫌が直ってきたようだ。
 入場ゲートで、1日フリー券を買い、手首にプラスチックのリングを着ける。
 おそろいだなぁって思うと、なんだかうれしくなった。
「おそろいだね!」
 瞳に星を宿したステラさんが、僕と同じ想いを口にする。
 ドキッとして、うろたえ、もごもごと口ごもる。
 そんな僕の腕に、いたずらっぽく微笑んだステラさんが、しがみついた…
―――
 陽気な音楽と、遊具の立てる轟音に、テンションが上がる。
 真冬の遊園地では、さすがに、女性の黄色い悲鳴は聞こえなかった。
 すごく、寒かったんだ。
 コーヒーカップとか、定番の乗り物でも、手がかじかむくらい冷たくなった。
 調子に乗って、コーヒーカップをぐるぐる回したら、少し気持ち悪くなって、ステラさんに怒られた。
 ふと、視界の隅をスラリと背の高い女性がよぎった。
 体にフィットした、黒い皮のコートを着たその女性は、背中に鋼鉄の棒が入っているみたいに背筋が伸びていた。
 一回転してもう一度探したけど、もうその人はいなかった。
―――
 コーヒーカップを降りて、凍えた手をこすり合わせていたステラさんの両手を、僕の両手で包み込もうとしたら、パチッっと静電気の痛みが走った。
 慌てて手を離した僕は、なぜかクイーンの仕業だと思った。
 でも、ステラさんと目が合って、彼女のビックリした笑顔を見たら、そんなこともうどうでも良くなった。
―――
 売店であったかいコーヒーとたこ焼きを買った。
 席に着いて食べていると、急に僕の後ろを見ながらステラさんが立ち上がった。
「クイーンみたいな人がいた…」
「その人、黒い皮のコート着てなかった?」
 ビックリした顔で、ステラさんが僕を見る。
「やっぱり…さっき、チラッと見かけたから…」
 ステラさんが携帯を掛けたけど、今度は電源を落としているみたいで、連絡がつかなかった。
「探しに行こう!きっと、遊園地にきてるよ!」
 二人とも目撃してるし、ステラさんに対しては超お節介体質のクイーンだから、どこかで僕たちを監視している気がした。
「ジェットコースターのところにいた…」
 たこ焼きをコーヒーで流し込み、ステラさんの手をにぎって走り出した。
―――
(次回、マジ最終回…にしたいなぁ…)